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書名:回顧 1921~1946 「満蒙西域への夢の果て」
著者:長谷早苗
昭和17年1月といえば、太平洋戦争勃発の日の翌月、シルクロード走破を夢見て、あえて内モンゴルに拠点をもつ善隣毛織という国策会社に就職した21歳の青年がいた。しかし、既に泥沼化しつつあった日中戦争も戦局が悪化し、シルクロードへのルートも蒋介石軍と米軍に占領されてしまった。青年はそれからシルクロードへの旅を諦め、天津の資生堂、南京の三井物産等に転職し、やがて1945年4月南京で召集、8月漢口で終戦を迎えた。青年はそれから約半年間、南京の日僑集中営(日本人居留民強制収容所)等で過ごし、1946年2月、引き揚げ船「江の島丸」で上海を出航するも船は揚子江沖で機雷に接触して沈没。しかし、幸い、近海を航行中の米海軍貨物船「ブルーバード」に救助され、青年は他の400人以上ともいわれる引揚者とともに死を免れた。青年の名は長谷早苗といい、今年で95歳になる人で、彼の幼少期から戦後の引揚げの時までを綴ったのが本書で、2010年に発行した「四半世紀の追憶」初版という自伝に「死を賭して」という一文を追補したのが本書である。
なお、第2版では、引揚船「江の島丸」で機雷触発事故に遭遇した当時上海日本人居留地中学生であった和泉淳弘氏の記録の内、を平和祈念事業特別基金「平和の礎 海外引揚者が語り継ぐ労苦 XI」(平成13年 発行)より「江の島丸」の部分を平和祈念展示資料館の許可を得て転載した(編者)。以下、初版ならびに追補第2版の序文である。人並みに年をとり米寿の歳を越す頃となりました。過ぎし大正~昭和~平成の三代は、余りにも変化多き日々であり、無性に思い起こされ、同時にそんな混沌とした渦に幾度となく巻き込まれながらも何とか生き残こらさせて頂いた身の幸運は、これ一重に神仏の深甚なるご加護によるものと深く心に刻んでおります。今の世も、人は絶え間なく愚かな戦に明け暮れていますが、往時においても十年に一度は大戦があるといわれ、日清、日露、第一次、そして第二次大戦となるや、国民の精神的、肉体的、経済的苦痛たるや極限に達したといえます。斯くして、駄目押しのように昭和十六年にこの国の首相として陸軍大将、東条英機を祭り上げるという悲劇的愚行が行われてしまい、これが悲惨な第二次大戦への最後の極めてとなったと信じています。戦争の悲惨さは、経験した者でなくしては判らぬものですが、其の片鱗だけでも知ってもらえればと思い、併せて幼少時代~青年時代のことなどをつまみ食いのように、思い出すままに「耄碌」頭から搾り出しながら書き下ろしました。そして、敗戦の時代まで書き進めた時点で最早気力つきた感あり、暫し大休止となりました。2010年2月,往時を偲び自伝を書いたがその後読みかえし書き足りぬ事多く何か喉に引っかかる様な感を持ち続けて来た。書き足さぬと往生しきれない様な気持ちが近頃次第に強くなった。2016年3月12日に私は95歳になってしまったので最早これ以上ぐずっては居られなくなった。
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