鎌倉大仏殿高徳院仁王像、修復作業完了。新たな装いで新登場
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| 修復完了記念法要（2014年4月2日） |
「露坐の大仏」として名高い鎌倉大仏殿高徳院。その門前の仁王像一対、阿行（あぎょう）像、吽行（うんぎょう）像は2011年秋以来修復作業が進められていましたが、2014年4月2日、晴れて修復完了の記念法要が同仁王門前で執り行われました。
仁王像の高さは阿行、吽行ともに約３メートル、重さは約２００キロ。修復にあたったのは鎌倉市材木座の彫刻家、瀧本光國（たきもとみつくに）氏で、瀧本氏によれば、作者は不明、制作は１７００年代半ばと推定され、１９０３年と５４年に修復したことを示す木札（もくさつ）が納められていたそうです。今回の修復は明治、昭和に続き３度目、５８年ぶりということでした。
本修復にあたっては、修復前後の形状を記録するため、360度PhotoVR撮影と3次元計測が以下の通り行われました。
1）360度PhotoVR撮影
回転撮影システム: LaptopPC + 大型水平回転装置 Texnai AZ Rotator120 + デジタル一眼レフ Canon EOS DX4
回転制御・撮影ソフト: Texnai ObjectoMaster
撮影仕様: 水平72フレームｘ１、水平72フレームｘ垂直平行移動３ポイント
PhotoVR形式: FlashならびにQQuickTimeVR
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| 修復後の吽行像とAZRotator120 | 修復後の吽行像と三次元計測 |
被写体の仁王像は台座を含めると約300キロの重さになるため、その重量に耐えうる回転台の開発からプロジェクトは始まった。ポイントは回転台の直径を普通車で運べる最大の120ｃｍとし、その外縁を重さ１トンまでは耐える円形のローラで支え、ステッピングモータの軸に直接荷重がかからないように箱型のギアを噛ませて回転できるように工夫したことである。称してAutoQTVR AZ Rotator120。ローラの上を滑らかに回転できれば水平の負荷はそれほどかからない。ステッピングモータの軸に直接負荷がかからなければ少なくとも５００キロまでは楽に回せるだろう。仮にステッピングモータで回転できない場合に備え、ギアをフリーにして手動で回転できるようにもした。
こうしてまずは高徳院裏の仮設作業場に装置を運び込み、修復前の撮影を試みようとした。が、修復前に関しては残念ながら仁王像の状態が二体とも予想以上にひどく、脚まわりの損傷も激しくて作業場で立たせることもままならなかった。従って修復前については回転撮影はあきらめ、御像を床に寝せたままスチル撮影と三次元計測をするにとどめた。このときのスチル撮影はスティッチングソフトで全身をつなぎ合わせて全身像の復元を試みた。
修復後の撮影は、あの大雪の降った後の2月17日から3日をかけ、横浜の日通倉庫で行われた。縦横10ｍｘ15ｍ、高さ10ｍほどの撮影スタジオとしては十分すぎる広さだった。撮影当日、その一画に養生を施された仁王像二体が鎌倉から運びこまれ、われわれの到着を待っていた。３００キロもの文化財を回転撮影するのは初めての試みであったため、撮影は、御像を回転台に載せるところから心配であった。理屈では1トンまで耐えられる回転台ではあったが、実際、載せてみたら台座そのものがつぶれてしまうことも全くありえないことではない。また、回してみたらステッピングモーターが悲鳴をあげて煙が出てくることもなくはない。と、とにかく心配の種がつきなかったが、実際の結果は上々だった。３００キロの御像は、日通スタッフの手馴れた作業でらくらくと回転台に載せられ、ステッピングモータもいつもの快音を発しながらなんなく回転し、通常のAutoQTVR撮影となんら変わりなく進めることができた。
2）三次元計測
三次元スキャナー：NDI OptTRAK Pro(精度約2μm)
回転台: LaptopPC + 大型水平回転装置 Texnai AZ Rotator120
ポリゴンデータ形式：obj、stl
三次元レンダリング：Lightwave、MeshLab
三次元計測はマイクロテクニカ社の協力で行われた。三次元計測にはカナダ製のOptTRAK Proを用いた。
オプトトラッカーと非接触レーザースキャナとを組み合わた高精度ポータブル３次元計測装置で、横浜ではオプトトラッカーを御像の周りに配置しなおす代わりに360度PhotoVR撮影で使ったAZ Rotator120をそのまま回転台として使用した。スキャンしたデータは各部位ごとにパーツわけされレンダリングにまわされた。
■ 修復前
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| 作業場に寝かされた吽行像 |
作業場に寝かされた阿行像 |
3次元計測の開始 |
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| 修復前の吽行像合成画像 |
修復前の阿行像合成画像 |
■ 修復後
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| 養生を施された仁王像 |
回転台まで運ぶ |
薄板の上を滑らせて回転台に載せる |
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| 養生を解く |
回転撮影直前の吽行像 |
回転撮影後、回転台から降ろされる阿行像 |
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